「セックスの禁止」なんてバカな命令を解いてもらう為に、俺はゆいなに手を引かれながらあの男の住むタワーマンションに連れてかれる。
あの男と会うのは弱みを握られたあの日依頼で、ゆいなを完全に奪われてからは直接的な連絡をとっていない。
馬鹿にされるのか、勝ち誇られるのか、俺を見てどう反応を示すのか身構えたが、扉を空けるケンジは「よー陽太クンじゃん、どしたの?」と、いたって変わらない扱いで俺を部屋に招き入れた。
その反応に怒りとやるせなさが湧いてくる。
この男にとって、俺とゆいなの『強制寝取らせ』はもう既に終わった事柄、人の関係を引き裂いておいて、『ちょっとしたイベント』程度の認識だと思っているのだろう。
それに被害者の俺がどう感じているかなんてさらさら興味もないし、俺が歯向かうなんて考えてすらもない。
今からこんな最低な男に俺は頭を下げなければならないのか……。
馬鹿らしくも残酷に決まった『ゆいなとのセックス禁止』を解いてもらう為に。
「それでー呼んでもねーのに陽太クンから来るなんて初めてじゃね?」
部屋には知らない女と男が一人、男の方は馴れ馴れしくゆいなの胸を揉みしだき、その横にいる俺を横目に半笑いを浮かべた。
「あれ?コイツって~」とケンジに目を向けると「俺の舎弟」と即答する。
「あれ?っつーか、お前ら一緒に居るとこ始めて見たわ。いやーマジで不相応過ぎて笑えてくるなー」
ケンジが意気揚々と喋る中、俺は沈黙を貫き横に座るゆいなに小突かれる。
呆れかえる様なゆいなの表情、今更なににプライドを持っているんだと言っている気がする。
この男の前で晒していた俺と、ゆいなに対して接していた彼氏としての俺。
それは既に崩れ去った虚栄であり、ゆいなはもうそっち側なのだ。
だからこそ、もう俺は口にするしかなかった。
ただ、とにかく、セックスがしたい。そんな哀れな願いをケンジに打ち明けた。