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matsuri7103
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地名に関する話


カメラマンをしている友人に連れられて、大阪にあるギャラリー兼カフェバーに行った。

そこで出逢った友人のギャラリー仲間の一人が、ホラー漫画家さんに怪談のネタを提供している方で、私が怖い話が好きだと伝えると、ご自身にまつわる体験談をいくつか教えてくれた。


大阪G大学は、知る人ぞ知る心霊スポットだという。

語ってくれた方を仮にAさんとする。

Aさんもその大学に通っていたが、大学構内では突然発狂する学生が例年のように出るのだそうだ。Aさんの在学中には、頭から灯油を被って自分に火をつけた学生もいるらしい。


Aさんが在学中に、校内のとある館に幽霊が出るという噂を聞いて、友達と夜中に大学に入り肝試しをしたことがあったという。

螺旋階段を上がり、屋上まで登ったが特に何も起きない。

まあ、いつでも霊が現れるわけないか。

そう仲間同士で笑って、半ば落胆しながら螺旋階段を下りて行った。

すると、カンカンと高い音が自分達のいる場所の上のほうから聞こえる。

金属製の床を歩いたときに出るような靴音だった。


Aさん達が顔を見合わせて音のしたほうを見上げると、足音は速くなり、その音と連動するように人影が揺らめている。

影の動きと足音から、上から螺旋階段を下り、誰かが自分達を追いかけているように思えた。


「まずい!」

誰ともなくそう叫び、皆は転げ落ちるように螺旋階段を駆け下りていった。

建物から飛び出して息を吐いていると、ちょうど校内の見回りをしている警備員のおじいさんに見つかったそうだ。

警備員さんは、真夜中に校舎から飛び出してきた学生達を見ても特になにも追求せず、「はよ帰り」とだけ言ったという。


他にも校内で不審なことがいくつか起きたそうだ。

「大阪G大学の心霊現象」とネットで検索すると、落ち武者の幽霊が出るという体験談が書き込まれているページを何件か見つけた。

あまりにも怪奇現象が多いので、これは学校自体になにか曰くがあるのかもしれない。

Aさんはそう思うようになった。


ある日のこと。ちょうど雨が降りそうな夕方だったという。

Aさんは念の為に、自転車に傘を留めて走らせていた。

すると、とある溜池の前を通り過ぎた時に、突然傘のハンドル部分が地面に落ちた。

Aさんには何が起きたのか分からなかった。それほど突然の出来事だったのだ。

自転車を止めて、落ちたハンドル部分を拾い上げて見ると、まるで鋭利な刃物で切られたかのようにスパッと綺麗な斜めの断面が残っていた。


改めてハンドルが落ちた周辺を見渡すと、ふと溜池に地名が書かれているのが目に留まった。

「富田林●●溜池 危険なので入らないでください」

といった、溜池によくある注意書きの看板だ。


「富田林(とんだばやし)」


その見慣れた土地名が、この時やけに気になったという。

帰って調べてみると、「富田林」の地名の由来は「林に首が飛んだ」ことに由来するらしい(あくまで多くある説の内の一つ)。

この土地は多くの古墳があり、南北朝時代には楠木正成の山城が築かれ、応仁の乱には戦いがあった場所なので、「斬られた武士の首が飛んだ」という背景も有り得ることだと考えた。


そこでAさんは地図を見て、ふと気付いた。

富田林市の右隣に位置する大阪G大学は、古墳の上に建っているのだということに。


この辺り一帯は氏族長の古墳が非常に多く、天皇陵クラスになると現在でもそのまま残されているが、他の古墳などはそのまま上に建物が建ってしまっていることもある。


お墓の上に建ってるんじゃあ、おかしな現象が起きても不思議ではない。

そう納得したのだと、Aさんは語った。



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Aさんが語ったのは大阪の話ですが、京都にも怖い由来のある地名が今でも多く残っています。

例えば「血洗町」。

源義経がこの地で盗賊に襲われたという。一説には平家の武士だったとも。

そこで盗賊を皆殺しにし、刀についた血を洗った池が「血洗池」。その池がある地区一帯を「血洗町」としたといいます。

住んでいる人はこの地名が嫌で、「皿洗町」と書く人もいるそうです。


京都はかつて都があった場所なので多くの人が住んでいました。貴族はきちんと埋葬されますが、貧しい民は都から外れた場所で野ざらしになっていたり、乱雑に埋葬されていて、そういった背景からついた地名も多く残っています。


「轆轤町(ろくろちょう)」は、元は「髑髏町(どくろちょう)」という名前で、たくさんの人骨が転がる埋葬地だったそうです。江戸時代の役人が、あまりにも不吉な地名だということで現在の町名になりました。

辻にはあの世の入り口を示す「六道之辻」の石碑が今でも建っています。


「千本通り(せんぼんどおり)」は、埋葬地へ死者を運ぶ通り道でした。

そのため、道の両脇には数えきれない程の卒塔婆が立っていたそうです。千本を超えるほどの数の卒塔婆が立っていた通りなので、「千本通り」。

またこの通りの近くには「閻魔前町(えんままえちょう)」というあの世を示す土地があり、他にも「紫野(むらさきの)」という地名がありますが、これは死者の血の色が紫色だったことから、「死者の血だらけの野原」という意味で「紫野」になったそうです。


このように地名には、過去の歴史を思わせるものが多くあります。

ただ、最近では不吉な名前のままだと人が新しく住んでくれないということで、地名を別のものに変えてしまうケースもあります。

災害の多い地域でもそういった地名があり、現在では調べないと分からないことも。

かつてそれをテーマに怖い話を書いたことがありますが、地名は先人からのメッセージであり時には警告を意味するので、やたらめったら変えるべきではないと個人的には思います。


地名はあくまで土地の名であり、必要以上に意味を付与し、恐れることはないと考えます。

千本通りは、京都では主要な道路の一つですし、紫野にはお洒落なカフェが増えて、観光客も多く訪れています。

轆轤町は、少し歩けば清水寺の近くという位置にあり、ザ・京都!という場所です。


人が住むから歴史があり、そこには良い意味だったり良くない意味だったりと命名の背景は様々です。

それを必要以上に忌避せず、「こういう歴史があったんだなぁ」と後世の人が知れるのが一番だと考えます。

京都は半ばネタ的にもなってきて、ミステリーツアーで「あの世」と関連のある土地を紹介する地元の観光ツアーや、書籍、番組特集なんかもよく見かけます。

私なども怖い話を書くため、地名由来で怪談を創作します。とはいえ、実際の地名にすると住んでいる人にとってはあまり気分が良くないこともあると思うので、基本的には創作の地名ですが。

富田林を調べたAさんのように「今起こっている原因を調べると、過去のこの歴史と繋がるのではないか」という、ある意味歴史ロマンを感じることもあるでしょう。

ちなみにですが、富田林は江戸時代の建物が多く残っている町があり、昔の風情を味わえる歴史的な場所です(記事のカバー画像が富田林市内の寺町です)。


捉え方は人それぞれなので、「なんか響きが良くない」という理由で長く伝わってきた地名がなくなるのは、なんだか惜しいような気持ちがします。


地名や歴史的背景について妄想を膨らませて怪談と関連付けることと、実際の土地や住んでいる人との区切りはちゃんとつけておきたいと思います。

この辺りのラインを誤解なく伝えるのが難しく、FANBOX内でのみ、こっそりとお話しました。



地名に関する話

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