雨が続き、じっとりとした暑さを感じ始めると、怪談にぴったりの季節になったなぁと思う。
FANBOXや一時期やっていたもくりで身近に起きた怖い話を語っていたので、まだ話していない内容はあったかな、と記憶を手繰り寄せた。
これは、私が大学生の頃の話。
当時私は大学の図書館でバイトをしていた。職員の方や派遣の司書さんがいたので、学生アルバイトがすることは主に返却作業だった。あとは本棚の整理とか、学生目線での新しく入れる本選びなど。
返却作業は開架図書と閉架図書の両方がある。閉架書庫での作業は地下に降りて行う。
バイト仲間の間では、この地下での作業が好まれていた。
というのも、閉架書庫は通常、スタッフなど図書館関係者か学校の先生しか入れない。人の目を気にせずに自由に過ごせる場所だったので、ちょっと一息ついたり雑談したりしても咎められないスポットだった。社会人になって、かなり優しい環境でバイトさせてもらっていたな…と当時を振り返って申し訳なく思うこともあったほど、ゆる~い環境の仕事場だった。
雑談しながらでも本の並び替えなど手は動かしてはいたのでサボっていたわけではないのだが、基本的に黙って仕事をする環境であったので、やっと喋れる!という意味では、閉架書庫はバイト仲間との交流の場でもあった。
そんな閉架書庫で、ある話を先輩から聞いた。
曰く、この閉架書庫では時折怪奇現象が起きるのだという。
1つは、本が不自然に床に置かれている、ということ。
児童も利用する公共の図書館ならいざしらず、ここは大学の図書館だ。開架書庫ですら、本はきちんと扱われている。ましてや、閉架書庫は先述の通りスタッフと教師陣しか入れない。手に取った本をポンと床に置き去りにするとはまず考えられない。
その話を聞いたとき、確かに不思議な現象だなぁと思った。
その話を聞いてから大分経ったある日、返本作業のために閉架書庫に降りてきた私は、本棚と本棚の間の床に1冊の本が置かれているのを見つけた。
それは確かにあまりにも不自然に、棚から落ちたという感じでもなく、表紙を上にした状態でポンと置かれていたのだ。
特に怖いという感じはなかったけれど、とても不自然だと感じた。
しかもその本は、その場所とは全然違う場所の本棚にあるべき本だった。
もう1つの出来事も、返本作業中に起きた。
その日はメンバーが少ない日だったと記憶している。1人で担当するエリアが広く、近くの本棚には誰もいなかったからだ。
その階の本棚は全て電動式になっており、ボタンを押して本棚をスライドさせて目的の棚に本を戻していた。
そのとき、ちょっと離れたところでピーピーという音がして本棚が動きはじめた。
おかしい。
あそこは私がさっきまで返本をしていたところで、誰もいないはず。
そのとき、私は先輩から聞いた「勝手に動く自動書架」の話を思い出した。わくわくした気持ちと少しの緊張感をもって、そっと音のしている所に歩いて行った。
ちょうどガチャンという軽い音がして本棚が開き切ったところだった。
そこには誰もいなかった。
怪奇現象に遭遇してしまった…!と、トトロに会ったさつきちゃんと同じ反応で、そのときいたメンバーにさっき起こったことを話した。
話してから、いや信じてくれるかな?と思ったのだが、そのときいたメンバーの1人も以前に同じような現象に遭遇したのだと言った。
かなり歴史ある学校なので、図書館だけでなく他の校舎にまつわる怪談も多かった。
だから、この図書館にもなにかある、それを疑う人はあまりいなかった。
特に、本の多い場所というのは誰もいないはずなのに、ふと何かの気配を感じることがある。
人の念がこもった物が多い場所だからだろうか。
話は少し変わって。
みなさんは、どういうところで怪談を読むことが多いでしょうか。
私よりもずっと怪奇現象が身近にあった友人がいるのだが、彼女からよく怖い話や実話怪談のブログなどを教えてもらっていた。
あるとき、元アイドルの方が書いている実話怪談が、かなり「やばい」のだと教えてくれたことがあった。
どう「やばい」のかというと、話自体はそれほど怖いものではないのだが、たまにぞわぞわと鳥肌が立ってくるお話がある。その話を読んでいるとどうにも悪寒が止まらなく、誰かに見られているような気配がするのだそうだ。
友人は通勤時間が長く、移動中の電車でそのブログを読むことが多かった。
最初は人の多い場所でなら怖い話を読んでも大丈夫だろう、と思ったそうだ。だが、電車で怖い話を読むようになって、「何かに見られている」「何かを連れて帰ってしまいそうになった」ということが起き始めたという。
彼女は割と敏感な性質であったし、よくそういった得体の知れないものを連れてきてしまう体質なのだそうだ。
話は少し逸れるが、そういった体質なのに「自分の家には絶対に連れて帰らない」そうで、ついて来てしまったものをどこかで落としたり、誰かに移動させたりしてしまうらしい。これは本人の意思とは無関係の作用らしく、彼女が去った後で不可思議な現象が起きたり、乗せてもらった車から降りた時に走り去る後部座席に一瞬居るはずのない誰かが乗っているのを見てしまったことがあるそうだ。
そんな気配に敏感な友人が、電車の中で怖い話を読むのは危険だと判断したらしい。
その話を話題として、2人で色々推測してみたのだが、電車という人の多い場所は自然と「念が集まりやすい」ということが考えられた。
念とは生きている人のものから、そうでないものまで雑多だ。
そもそも、怪異というのは人が認識して初めて「怪異」という形を得る。
人の認識がない怪異は、自然現象みたいなものだ。
つむじ風が鎌鼬になったり、得体の知れない音が小豆洗いになったり。
「外国人」だって、その国の人にとっては現地国の人間だ。よその国の人間が認識して、初めて「外国人」になる。
こう考えると、人の多い場所に怪異が多いのも当たり前のことなのかと思う。