讃岐国に七人童子という怪が現れるという。
丑三つ時に四辻を通ると、童子姿の黒い影が一列に並んで歩いている。人間がこの行列に行き会うと、気分が悪くなったり、死を呼び込むと言われている。
七人童子が現れる四辻は決まっていて、一度七人童子の噂が出ると、その辻は避けられるようになった。
灰買いの登五郎が日々通る四辻でも、七人童子が出たと騒ぎになった。この登五郎という男、妖怪変化の類を一切信じていない。
丑三つ時に遭うというが、そんな夜更けに辻をうろついているのはどんな輩だというんだ。もしかすると、夜中に盗んだ物を隠していて、人の通りを避けるためにそんな噂を流しているんじゃないだろうか。そもそも、あの辻は上得意の旦那の家に行くのに一番の近道なんだ。化け物が出たなんて不確かな騒ぎを信じて、わざわざ遠回りしてやる必要なんか無いだろう。
七人童子の騒ぎが起こった翌朝も、登五郎はいつものように例の四辻を通った。
四辻に差し掛かったとき、畑の間から茶色い毛むくじゃらが一匹山のほうに走っていくのが見えた。
なんだい、随分夜更かしな狸もいたもんだ。ああ、もしかすると、酔っ払いが狸共を妖怪だと見間違えたんじゃないだろうか。
この地には、昔から狸に化かされたという話が伝わっている。狸に人を化かす力があるもんかと登五郎は思っているが、酒に酔った人間が夜中に黒い影が動くのを見て、子供の亡霊に見えたのかもしれないと考えた。
四辻を通っても、体調に異変は起こらない。やっぱり妖怪なんているわけがないと、鼻歌交じりに家々を回り、灰を買っていった。集めた灰を馴染みの焼物屋の職人に売り、日銭を手に入れた登五郎は足取りも軽く家へと帰った。
家へ帰ってみると、いつも出迎えてくれる娘も、土間で煮炊きをしている嫁の姿も見当たらない。どうしたのかと戸口の前で立ち尽くしていると、隣家の男が声を掛けてきた。
柿の木に登って遊んでいた娘が、木から落ちて腕の骨を折ったという。泣き叫ぶ娘に気付いた嫁がすぐに畑からすっ飛んできて、娘を抱きかかえて町医者のところに駆けて行ったのだそう。
町医者といえば柳原先生のところだろうと、登五郎は駆けて行く。途中、四辻へと続く道に差し掛かったが、ふと足を違う方向に向けて遠回りをして行った。
讃岐の国七人童子の事